2012年05月30日

便秘の分類と治療法(東洋医学編)

前回の東洋医学(中医学)の基礎知識を踏まえ、便秘の分類をします。

中医学における便秘は、以下の①~④の4種類に分けられます。③はさらに2型あります。また①②は「実」の便秘、③④は「虚」の便秘です。

①熱秘(ねつひ、ねっぴ)‥‥‥胃腸内に熱がこもり、大便が乾燥して出にくくなった状態です。病気で熱が出た時や、もともと体温が高くなりがちの人、また辛い物や熱い物の過食により、津液が損傷することで起こります。中医学での治療方針は、熱を冷まし、腸を潤すことです。

②気秘(きひ)‥‥‥気の働きが滞ったために、胃腸の機能が低下して便が出にくくなった状態です。精神的なストレスや、長時間座っていてあまり動かないことなどで、気が正常に働かず消化・排泄が順調に行われないために起こります。中医学での治療方針は、気の鬱滞を取り除き、胃腸機能を整えることです。 

③虚秘(きょひ)‥‥‥身体が虚弱で、腸管が機能低下して便が出にくくなった状態です。虚しているものにより、さらに2種類に分けられます。

 a.気虚秘(ききょひ)‥‥‥気が不足し、消化・吸収・排泄の機能が低下した状態です。過労や飲食の不摂生、加齢、産後や病後、また慢性病などの理由により、気の生成が減って働きも弱り、便を出す力が衰えるために起こります。中医学での治療方針は、 気を補い、胃腸機能を強化することです。

 b.血虚秘(けっきょひ)‥‥‥血液の不足により大腸が潤いを失い、便が乾燥して固まった状態です。加齢や病後で体が弱ったり、産後に血液不足となることによって、大腸を十分に潤すことができなくなるために起こります。中医学での治療方針は、血を補い、腸を潤すことです。

 ※前回ご説明したように、気と血は互いに密接な関わりを持つので、a.b.両方が合併した「気血両虚」という状態も臨床上よく見られます。

④冷秘(れいひ)‥‥‥気の不足が進行して体温を維持する機能が衰え、身体の内部に冷えが凝り固まって便が出にくくなった状態です。平素から冷え症の人、また加齢により、気の温める作用が低下して腸管も冷え、便を出す力が弱るために起こります。中医学での治療方針は、内臓を温め、腸の動きを良くすることです。

【参考文献】前回に同じ.

 社団法人東洋療法学校協会(編),教科書執筆小委員会(著):東洋医学臨床論〈はりきゅう編〉,医道の日本社,1993

 

以上の分類と治療方針は、中薬(日本でいう漢方)と鍼灸共通です。中薬ではそれぞれに効用のある生薬を組み合わせて処方するのに対し、鍼灸では該当する経絡(けいらく、五臓六腑に対応した気血の通り道)やツボに、鍼やお灸をして治療します。

4回連続で「便秘」について東西双方の観点から、ごく大雑把ではありますが解説させていただきました。少しでも東洋医学について興味を持っていただければ幸いですhappy01