2012年09月01日

腎について

9月のスタートもゲリラ豪雨+雷で、落ち着かない天気でしたrainthunder

前回の歯の話題から、今回は中医学におけるの生理機能について解説いたします。腎は五行の水に属し、膀胱と表裏関係にあります。

 

①精を蔵し、生殖・発育を主(つかさど)り、先天の本である‥‥‥「精を蔵す」とは腎の主要な機能で、この精は「腎精」と呼ばれます。腎精は「先天の精」と「後天の精」から構成されます。「先天の精」は、父母の腎精から受け継いで胚胎時に形成されるもので、先天的な体質の強弱を決定します。出生後は成長・発育・生殖の最も根本的な物質的基礎として、生命活動の動力源となります。「後天の精」は、五臓六腑により化生した水穀の精気(飲食物の栄養分)が生体の生理活動に供給された後、その余剰分が腎に貯蔵されたもので、人体の生命を維持し、各組織器官を滋養し、成長・発育を促す基本物質です。「先天の精」と「後天の精」は相互に補い合い、依存し合って、人体の成長・発育を促進し、生殖能力を形成するのです。腎精が不足すると、発育不良や虚弱体質、生殖機能の異常などが現れます。

②水を主る‥‥‥腎は水液代謝を調節する機能をもちます。水液の代謝と調節には、主に肺・脾・腎の三臓が関与しており、特に腎が中心的な役割を果たします。水液代謝には、水穀の精微から得られた津液を全身の各臓腑組織に運ぶことと、各臓腑組織が代謝し利用した後の廃液を体外に排出することが含まれ、この過程は腎の蒸騰気化(水分を蒸発させて気体にする)作用によって推進されています。体内の水液代謝の平衡を維持するために、腎は最も重要な地位を占めるのです。

③納気を主る‥‥‥腎が肺の吸入した清気(大気)を摂納(受け入れ納める)し、呼吸が浅くなるのを防ぐ機能をもつことを指しています。呼吸は肺が司りますが、吸入した気は腎まで下りてきてはじめて全身に役立ちます。腎の納気機能が減弱すると、呼気が多く吸気が少ない喘息の症状が起こり、臨床上これを「腎不納気」といいます。

④骨を主り、髄を生ず‥‥‥腎精は骨格の生長・発育を促進し、骨髄・脳髄を滋生(滋養し生み出す)します。腎は精を蔵し、精は髄(脊髄・骨髄)を生じ、上は脳に通じて脳を充養(充たし養う)し、四肢では骨格を滋生するので、骨と髄は腎精に依存しているのです。髄が頭に集まって脳になるため、「脳は髄海たり」ともいわれます。腎精が不足すると、骨がもろい・歯が動揺する・記憶力の減退・めまいなどの症状が現れます。

⑤耳に開竅(かいきょう)する‥‥‥‥聴覚は主に腎精の充養に依存していることを指します。耳は腎に属し、腎の精気が充足してはじめて聴覚は鋭敏になります。腎精が不足すると、耳鳴・聴力減退・甚だしければ難聴などを呈します。

⑥二陰を主り、開闔(かいこう)を司る‥‥‥「二陰」とは、前陰(尿道と外生殖器)と後陰(肛門)です。「開闔」の「開」は輸出と排出を、「闔」は関門を閉じ貯蔵することを意味します。前陰には排尿と生殖の機能があり、尿の排泄は腎の気化を受けて膀胱が推進しています。後陰では大便の排泄をしますが、これも腎の気化を受けて大腸が推進しています。腎の機能が失調することにより、大小便の排泄障害や生殖器系の機能異常が起こります。

⑦恐を主る‥‥‥腎は「恐」と強い関連性があります。「恐」は「驚」と似ていますが、「驚」は無自覚で突然に生じるのに対し、「恐」は自覚的であり俗に胆怯(たんきょう=臆病でびくびくする)といわれます。いずれも生理活動に悪い影響を与える精神刺激で、これにより腎の精気が傷つけられると大小便の失禁を来したり、心身不安を引き起こしたりします。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

 

腎は五臓の中でも特に機能が多いので、省いて省いて記載してもややこしくなりましたsweat01 人体は複雑ですねぇ。。。