2012年10月02日

肺について

もう10月に入り、朝晩はめっきり秋の涼しさになりましたhorse 長引いた猛暑の疲れが出てくるこの頃、軽いかぜ引きさんもちらほら見受けられますeye

今回は、秋と同じく五行の金に属する五臓のについて、主な生理機能を解説いたします。これまでご紹介した肝、脾、腎と同様、現代医学的な臓腑と重なる部分もあれば、中医学独特の考え方も併せ持っています。

 

①気を主(つかさど)り、呼吸を司る‥‥‥「気を主る」とは、「呼吸の気を主る」と「一身の気を主る」という二つの面があります。「呼吸の気を主る」というのは、肺の呼吸運動を指しています。肺は自然界の清気を吸い込んで充満し、体内の濁気を吐き出すと空虚になり、呼吸を司る運動器官であり気体交換の場でもあります。「一身の気を主る」というのは、全身の気を維持し調節する機能を指しています。肺が吸入した清気は、脾胃が吸収した水穀の精微および腎精から生じた腎気と合して「宗気」となり、これが肺から全身に散布され、各臓腑器官の正常な生理活動が保たれます。

②宣発・粛降を主る‥‥‥「宣発」とは外向き・上向きに発散・散布することです。脾が転送した水穀の精微を肺が全身に散布し、皮毛(⑤参照)にも達して衛気(えき=体表を保護し外邪の侵入を防御する気)を行き渡らせることによって汗を体外に排出します。「粛降」とは清潔にする・下降するという意味です。肺は気道を清浄に保って清気を吸入し腎に下納(下ろして納める)させ、また散布されて代謝された津液である廃水を膀胱へ下行させます。

③水道を通調する‥‥‥「水道」とは水液代謝の経路、「通調」とは疏通・調節するという意味で、これは②の宣発・粛降作用による機能です。肺は宣発作用によって津液や水穀の精微を全身に散布するとともに、汗孔(汗の出口)の開閉を通じて汗の排泄を調節します。また肺は粛降作用により、代謝された水液を膀胱に送り、尿を生成して体外に排出します。このことから、「肺は水の上源たり」「肺は行水(こうすい)を主る」ともいわれます。

④百脈を朝(ちょう)し、治節(ちせつ)を主る‥‥‥「朝」は集めて送り出すという意味で、「百脈を朝す」とは全身の経脈がすべて肺に集まり、肺での吐故納新(古きを吐き新しきを納める、つまりガス交換による新陳代謝)を経て、宗気の栄養を得た血液が再び全身に循環することを示しています。「治節」とは管理・調節するという意味で、「治節を主る」とは肺の主な生理機能を包括的に説明したものです。肺が呼吸運動を調節することで呼吸が規則的に行われ、同時に全身の気機(昇降出入)が正常に行われて血液の循環も維持され、津液の代謝も管理・調節されます。このように全身の気・血・津液の生成や排泄は、すべて肺の治節作用と密接に関連しているのです。

⑤皮毛を主る‥‥‥「皮毛」は皮膚・汗腺・うぶ毛などの組織を含む全身の表(身体の最外層)のことで、汗を分泌し、皮膚を潤し、外邪の侵襲を防御する機能をもちます。皮毛は肺が輸送した水穀の精微から栄養を供給されています。また肺は呼吸を司り、皮膚の汗孔の開閉によって皮膚呼吸も調節するので、汗孔は「気門」とも呼ばれます。したがって肺気が不足すると、皮毛が乾燥してつやがなくなり、外邪を防御する機能(衛気)も低下してかぜを引きやすくなります。衛気が不足して汗孔の開閉機能が低下すると、自汗(運動や発熱などがないのに自然に汗が出る)や無汗(出るべき汗が出ない)が起こります。

⑥鼻に開竅する‥‥‥鼻は肺の門戸で、呼吸の通路であるほか、肺気が嗅覚を主りにおいを弁別することを示しています。外邪はしばしば鼻から肺に侵入して、肺気を失調させ、鼻閉・鼻汁・嗅覚減退・嗄声(させい=声がかれる)・呼吸困難などの症状が現れます。

⑦憂と悲を主る‥‥‥肺の生理機能は、憂悲(憂愁と悲傷)に密接な関係があります。この二つの情動はやや異なりますが、人体の生理活動に与える影響はほぼ同じです。過度の憂愁や悲傷は気を消耗させ、肺は気を主るために憂と悲は肺を傷つけやすいのです。また逆に肺気が虚していると、憂愁や悲傷が生じやすくなります。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

 秋に物悲しくなるのは、乾燥した空気のせいなのでしょうか。。。weep