中医学

春の食養生

昨夏から季節ごとにご紹介してきた食養生シリーズも、いよいよ今回の「春」で一回りしましたrecycle

春は万物が芽吹く季節で、五行では、対応する五臓はです。春になると気温の上昇とともに、人体の新陳代謝や生命活動も次第に活発になり、栄養物質に対する需要量もそれに応じて増加します。また春の気候の特徴は「(ふう)」であり、気温や天気の変化が目まぐるしく、風邪(ふうじゃ)の影響でかぜを引きやすい時季でもあります。

これらのことから、春の食養生の原則は「栄養を増し、免疫力を高める」ことです。ただし、まだ冬の寒気の影響も残っており、臓腑の活動レベルは上がりきっていません。脾胃の消化機能を助けるため、香りのよい物や甘味の物、あっさりした料理を選びましょう。また、気温が上がってきたら辛い物や熱い物は控え、涼性のものも適宜取り入れるとよいです。代表的な食物を以下に挙げます。

 

〔春に食べるとよい物〕 品目(五性/五味) ※五性・五味には文献により多少の異同があります。

大麦(涼・平/甘・鹹)、大豆(平/甘)、黒豆(平/甘)、豆腐(涼・平/甘)、セロリ(涼・平/甘・辛・微苦)、ホウレンソウ(涼/甘)、タケノコ(寒/甘・微苦)、トウガン(微寒/甘・淡)、キュウリ(涼・寒/甘)、キクラゲ(平・涼/甘)、ニンジン(平・微温/甘・辛)、キャベツ(平/甘)、鶏卵(平/甘)、鶏肉(温/甘)、牡蛎(平・温/甘・鹹)

卵は平性となっていますが、黄身が温性、白身が微寒性で、合わせて「平」となっているところが興味深いですchick

 

【参考文献】

  梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005

  夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006  

食べすぎ

前回のブログのカメさんは、やはり隣の人が飼われていたらしく、マンションの管理会社の人に注意してもらいました(うちのマンションは原則ペット禁止)telephone

さて私は昨夜、夕食がやや多すぎたようで、食後すぐから今朝まで胃の膨満感と鈍痛がありましたdespair 足のすねの前面、中央より外側に胃の経絡が通っているので、そのあたりを自分で指圧していたら、お昼ごろには治りましたup ふだん小食なのに、たまにはりきって多めに食べると、こういうことになりますsweat02

中医学では、このような状態を「傷食(または食傷)」といいます。暴飲暴食、冷たいものや生ものの過剰摂取などにより飲食物が胃に停滞し、腐熟と降濁(2012年8月21日付ブログ参照)ができなくなるのです。主な症状は上腹部の痛み・つかえ・膨満感、食欲不振、呑酸(どんさん=酸っぱい胃液が口の中に逆流する)、噯気(あいき=げっぷ)、悪心(おしん=吐き気)、嘔吐など。吐いたりげっぷしたり、排ガス(放屁)で症状が軽減するため、虚実でいえばの状態です(2012年5月28日付ブログ参照)。

何事も、ほどほどにしないといけませんねpaper

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

髪は血余

明日は数カ月ぶりに美容院に行く予定ですhairsalon ショートだったころは毎月のように行っていましたが、ロングにすると、前髪さえ自分で切れば後は伸びるがまま、という状態になってしまいましたcoldsweats01 さすがに枝毛が増えてきたので、ここらできれいに毛先を整えてきたいと思いますshine

さて中医学では、髪の毛の状態も体調をうかがう判断材料の一つとなります。今回のタイトルは「髪は血(けつ)の余(よ)たり」という言葉から来ており、これは頭髪が血液の延長であり、頭髪の盛衰には血液の盛衰が反映されていることを表現しています。頭髪の栄養源は血なのです。

また髪は腎の精気の盛衰とも密接に関わっています。頭髪の発生の源は腎にあり、腎が蔵する精(2012年9月1日付ブログ参照)が血に化し、精血が旺盛になることにより毛髪が豊富で潤沢になるのです。腎精は加齢とともに衰えていくため、若いうちは髪につやがあり量も豊かですが、中高年となるにつれ白髪化したり毛がやせて抜けやすくなったりします。また若くても、病気や極端な栄養不良、強い精神的ストレスなどにより体力が衰えると、やはり髪が抜けたり白髪になったりすることがあります。中医学的には「腎精不足」と「血虚」の状態です。

私はまだ白髪はほとんどありませんが、たまに1本だけ見つかることがあります。その頻度がここ1、2年で増えてきて、最近は2カ月に1本(生え始めのごく短い毛ですが)ペースで見つかるようになり、やはり年を取りつつあるんだな~と、少し寂しい気持ちになりますdownwardright

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

土俵にも五行

春場所.JPG一昨日の休診日、毎年恒例の春場所観戦に行ってきましたcherryblossom やはり生の土俵は迫力がありますsign01

さて、大相撲の「土俵」の上には吊り屋根があり、下方に「水引幕(みずひきまく)」という紫色の幕が張り巡らされていますrecycle この幕には四方の中央と四隅に、それぞれ房が下がっていますが、方向によって色が違っていることにご注目くださいeye

これらの色は方角ごとに決まっていて、東が青房、南が赤房、西が白房、北が黒房となっています。つまり五行の色体と対応しているのです。これは四季と天の四神獣を表しているそうです(東の青龍=春、南の朱雀=夏、西の白虎=秋、北の玄武=冬)。

五行では「木・火・土・金・水」の順に、「東・南・中央・西・北」と「青・赤・黄・白・黒」、「春・夏・土用・秋・冬」が対応していますが、この中央の黄というのが土俵で、土を黄色と見なしているのです。この土の中には、毎場所前の土俵祭りの際に神様への供物(塩、昆布、スルメ、勝栗、米など)が埋められます。相撲がもともと神事であったことが、このようなところからも窺えますねshine

〔※「goo大相撲」のサイトを参照させていただきました。〕

緑内障の市民講座

市民講座.JPG今日はお昼で仕事を終えた後、梅田へ市民公開講座を受けに行ってきましたtrain 世界緑内障週間(今年は3月10~16日)に合わせた特別講演で、大阪では初めての開催だったそうですnew

患者さんの中に緑内障の方もいらっしゃるので、自分の知識を補うために参加してきましたが、最新の情報を分かりやすく解説してくださり、よく頭に入りましたgood

講演をされたのが東北大学の先生だけあって、東日本大震災の時の眼科医の取り組みについても紹介され、たいへん興味深いお話でしたeye

中医学でも緑内障は「緑風内障」といって、鍼灸や漢方(中薬)の治療対象となっています。すでに欠けてしまった視野は戻りませんが、鍼によって眼圧が下がったり血流が改善したりして、緑内障の進行を遅らせることが可能です。

治療の開始が早ければ早いほど悪化を防ぐことができる病気ですが、両目で見ていると症状に気がつきにくいため、定期検診や他の眼疾患で受診した際に見つかることが多いようです。日本人の失明原因の第1位となっていますから、少なくとも40歳を過ぎたら、特に自覚症状がなくても定期的に眼科の検診を受けましょうsign01

胡麻の効能

昨日、一昨日と忙しく、ブログの更新ができませんでしたdown 昨日は祖父の葬儀から帰ってきた母が、東京土産に黒ゴマのお菓子をくれましたbullettrain 最近体調を崩しやすいので、栄養豊富なゴマ(胡麻)は嬉しい素材ですが、中医学的にも優れた作用がありますshine

 

〔胡麻〕

性味は平、甘。

効能は、補血明目(血を補い目の疲れを解消する)、潤腸通便(腸を潤し便通を良くする)、生津通乳(津液を作り母乳の出を促進する)、補肝腎(肝と腎の機能を高める)、養髪(頭髪を滋養する)など。

主な適応症は、身体虚弱、貧血、乾燥肌、便秘、産後母乳の出が悪い、若白髪、めまい、耳鳴りなど。

栄養学的には、リノール酸(不飽和脂肪酸)、必須アミノ酸、ビタミンE、ビタミンB₁、カルシウム、鉄分などが豊富です。主体が油分なので、一度にたくさん取ると胃もたれしたり、またアレルギー症状を悪化させたりすることもあるので、体に良いとはいえ少量ずつ取るようにしてください。便通を良くする作用もあるため、もともと下痢傾向の人には不向きです。

なお、胡麻には白胡麻と黒胡麻とがありますが、効能は大体同じです。ただ五行の色体の関係から、白胡麻は肺に、黒胡麻は腎に、特に関係が深いという考え方もあります。

【参考文献】

  梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005

  夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006 

蕁麻疹(じんましん)について

前回を受けまして、蕁麻疹について解説いたしますpencil

現代医学的な分類は、①特発性の蕁麻疹(明らかな誘因がなく、毎日のように繰り返し症状が現れる)、②特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹(刺激が加わることにより現れる)、③特殊な蕁麻疹または蕁麻疹類似疾患、の三つに大別されるようです(日本アレルギー協会)。それぞれ細分化された病型がありますが、ここでは割愛させていただきます。

中医学では、蕁麻疹のことを「風疹(注・現在流行している感染症とは全く別物です)」「癮疹(いんしん)」などと呼びます。蕁麻疹の特徴は、突然現れて治ると跡形が残らないことなので、病勢の変化が早い風邪(ふうじゃ)が関係すること、またすぐに隠れることからの命名です。

主な原因は、風寒・風熱の邪気が肌腠(きそう=表皮や皮下組織のこと)の虚に乗じて侵入し、皮膚に鬱結(うっけつ=滞ること)するために起こります。また精神的抑うつや食生活の不摂生がある場合も、脾胃の機能が損傷し、気血が十分に作られないので、皮膚に潤いがなくなり発症します。

いずれのタイプであっても、発疹の色(鮮紅色か蒼白色か)や何が引き金になったか、前後の体調や随伴症状などにより、寒熱・虚実(2012年5月28日付ブログ参照)を判断して治療方針を立てます。しかしながら慢性の蕁麻疹は難治性のものが多いので、徐々には良くなっていきますが、完治までには時間がかかるものです。根気よく上手にコントロールしていきましょう、としか言えないのが心苦しいところですね。。。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

明日は旧正月

明日2月10日は旧暦の1月1日、旧正月です。ということは、今日は大晦日なんですね。日本の家庭では一般的に特別な行事はありませんが、中国や韓国、ベトナムなどでは新暦の正月よりも旧暦のほうが盛大に祝われますshine つい1週間前に節分があったばかりで、また年が改まるというのは不思議な感じがしますねsign02

古来、太陽や月の運行に基づいてさまざまな暦が作られ、その国の四季や農事などに即した運用がなされてきました。鍼灸の基礎理論となる東洋医学(中医学)でも、「天人合一説」により暦や季節に基づいた人体の変化や治療法などを考案しています。現代は生活様式も食糧事情も古代とはまったく異なっていますが、人間が自然の中の一部である、言い換えれば宇宙の中、地球の上に存在して生きているということは変わりません。

私自身も最近、生活のリズムが乱れがちなので、これを機に見直さなければなぁと思っていますcoldsweats01(←思うだけでなく実行しなければ!)

内出血

内出血.JPG今朝うっかり扉の角に左手を打ちつけ、中指に内出血ができてしまいましたsad 仕事には支障ありませんが、指を曲げ伸ばしすると少し痛みますsweat02

中医学では、このような外傷による内出血も「血瘀(けつお)」証に含めます。血瘀とは、原因にかかわりなく、血が滞った状態を指します。

以前にもご紹介しましたが、「通ぜざれば則ち痛む」ので、血瘀証では痛みが現れます。血瘀の場合は、固定性の刺すような疼痛や圧痛があり、皮膚や舌が紫暗色になるなどの特徴があります。滞りが取れれば、「通ずれば則ち痛まず」、痛みは治まっていくのです。

こんな軽微な傷は数日で治りますが、やはり痛いのはイヤなものですね。はやく良くなりますようにupwardright

冬の食養生

冬の気候の特徴は、言うまでもなく「」です(12月3日付ブログ参照)。五行ではに属し、対応する五臓は(9月1日付ブログ参照)です。

そのため冬の養生の原則は「体を温め腎を養う」ことです。食品は温熱性のものが良く、寒涼性のものは避けましょう。栗やクルミ、ニラ、エビのむき身、羊肉などが腎陽を温め補う作用があり、さらにゴマや黒豆で腎精や髄を補充できます。これらも含めて、この時季に適した食物を挙げましょう。

 

〔冬に食べるとよい物〕 品目(五性/五味) ※五性・五味には文献により多少の異同があります。

ニラ(温/〈生〉辛、〈加熱〉甘・酸)、ニンニク(温/辛)、ネギ(温・平/辛)、生姜(温/辛)、クルミ(温・熱/甘)、栗(温/甘)、黒ゴマ(平/甘)、黒豆(平/甘)、黒キクラゲ(平/甘)、羊肉(温・熱/甘)、エビ(温/甘)

冒頭で触れたように、冬は五行の水に属し、五臓では腎が対応しますが、五色(青・赤・黄・白・黒)では黒が配当されます。そのため黒ゴマや黒豆、黒キクラゲなど黒い食品は腎に効果があると考えられています。腎は成長や老化に深く関わる臓ですので、黒い食品を積極的に取るとアンチエイジングにも役立つようですclover

 

【参考文献】

  梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005

  夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006