中医学

腎について

9月のスタートもゲリラ豪雨+雷で、落ち着かない天気でしたrainthunder

前回の歯の話題から、今回は中医学におけるの生理機能について解説いたします。腎は五行の水に属し、膀胱と表裏関係にあります。

 

①精を蔵し、生殖・発育を主(つかさど)り、先天の本である‥‥‥「精を蔵す」とは腎の主要な機能で、この精は「腎精」と呼ばれます。腎精は「先天の精」と「後天の精」から構成されます。「先天の精」は、父母の腎精から受け継いで胚胎時に形成されるもので、先天的な体質の強弱を決定します。出生後は成長・発育・生殖の最も根本的な物質的基礎として、生命活動の動力源となります。「後天の精」は、五臓六腑により化生した水穀の精気(飲食物の栄養分)が生体の生理活動に供給された後、その余剰分が腎に貯蔵されたもので、人体の生命を維持し、各組織器官を滋養し、成長・発育を促す基本物質です。「先天の精」と「後天の精」は相互に補い合い、依存し合って、人体の成長・発育を促進し、生殖能力を形成するのです。腎精が不足すると、発育不良や虚弱体質、生殖機能の異常などが現れます。

②水を主る‥‥‥腎は水液代謝を調節する機能をもちます。水液の代謝と調節には、主に肺・脾・腎の三臓が関与しており、特に腎が中心的な役割を果たします。水液代謝には、水穀の精微から得られた津液を全身の各臓腑組織に運ぶことと、各臓腑組織が代謝し利用した後の廃液を体外に排出することが含まれ、この過程は腎の蒸騰気化(水分を蒸発させて気体にする)作用によって推進されています。体内の水液代謝の平衡を維持するために、腎は最も重要な地位を占めるのです。

③納気を主る‥‥‥腎が肺の吸入した清気(大気)を摂納(受け入れ納める)し、呼吸が浅くなるのを防ぐ機能をもつことを指しています。呼吸は肺が司りますが、吸入した気は腎まで下りてきてはじめて全身に役立ちます。腎の納気機能が減弱すると、呼気が多く吸気が少ない喘息の症状が起こり、臨床上これを「腎不納気」といいます。

④骨を主り、髄を生ず‥‥‥腎精は骨格の生長・発育を促進し、骨髄・脳髄を滋生(滋養し生み出す)します。腎は精を蔵し、精は髄(脊髄・骨髄)を生じ、上は脳に通じて脳を充養(充たし養う)し、四肢では骨格を滋生するので、骨と髄は腎精に依存しているのです。髄が頭に集まって脳になるため、「脳は髄海たり」ともいわれます。腎精が不足すると、骨がもろい・歯が動揺する・記憶力の減退・めまいなどの症状が現れます。

⑤耳に開竅(かいきょう)する‥‥‥‥聴覚は主に腎精の充養に依存していることを指します。耳は腎に属し、腎の精気が充足してはじめて聴覚は鋭敏になります。腎精が不足すると、耳鳴・聴力減退・甚だしければ難聴などを呈します。

⑥二陰を主り、開闔(かいこう)を司る‥‥‥「二陰」とは、前陰(尿道と外生殖器)と後陰(肛門)です。「開闔」の「開」は輸出と排出を、「闔」は関門を閉じ貯蔵することを意味します。前陰には排尿と生殖の機能があり、尿の排泄は腎の気化を受けて膀胱が推進しています。後陰では大便の排泄をしますが、これも腎の気化を受けて大腸が推進しています。腎の機能が失調することにより、大小便の排泄障害や生殖器系の機能異常が起こります。

⑦恐を主る‥‥‥腎は「恐」と強い関連性があります。「恐」は「驚」と似ていますが、「驚」は無自覚で突然に生じるのに対し、「恐」は自覚的であり俗に胆怯(たんきょう=臆病でびくびくする)といわれます。いずれも生理活動に悪い影響を与える精神刺激で、これにより腎の精気が傷つけられると大小便の失禁を来したり、心身不安を引き起こしたりします。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

 

腎は五臓の中でも特に機能が多いので、省いて省いて記載してもややこしくなりましたsweat01 人体は複雑ですねぇ。。。

中医学でみる「歯」

昨日は歯医者さんへ、半年に一度の検診に行きましたsmile 小さな虫歯はあるのですが、前回からとくに進んでいないので、また次回まで様子見となりましたdash 自分ではよく磨いているつもりでも、意外に歯ブラシの届いていない部分がけっこうありますねsearch

 

歯は中医学では「骨余」、骨の余りと考えられています。五臓では腎が関わります(腎は骨を主る)。

また上の歯茎には胃の経絡、下の歯茎には大腸の経絡が通じているので、歯と歯茎の状態から腎と胃腸の病変を推測することができます。

腎は前回取り上げた月経にも関わっていましたが、女性だけでなく男性でも同様に、大切な生理機能を担っています。次回、この腎について解説いたしましょうtoilet

中医学でみる「月経」

今回は、女性には避けて通れないもの、「月経」の話題ですmoon3

前回同様、私事で恐縮ですが、今月は珍しく生理周期が乱れて平常より10日近く遅れました。長引く猛暑で体力が低下したためと思われますが、中医学では月経の不調をどのように捉えているのでしょうか?

 

月経は、中医学用語でも「月経」です。周期のほか、経血の色や量、質(サラサラであるか粘り気があるか)も重視します。正常な色は鮮紅色~暗紅色で、終始薄い色の出血しかない場合は血虚(貧血)が考えられます。量は基準が難しいですが、平均的には3~5日間持続し、初めと終わりが少なく中間の日が多くなります。質は薄い(ポタポタ、タラタラという感じ)のが正常で、血塊(ドロッとした塊)が出るのは血瘀によるものです。

周期は28日前後が正常ですが、これより7日以上短いのが「月経先期」で、血熱あるいは気虚により出血の制御ができなくなったものです。また7日以上長いのが「月経後期」で、血虚や寒邪により血が滞るために起こります。さらに周期が不規則になるのは「月経先後不定期(無定期とも)」といい、気血不調和と脾・腎の虚弱によるものが多いです。

一方、周期が正常でも経血量が通常より多いものを「月経過多」、少ないか期間が短いものを「月経過少」といいます。前者は「月経先期」と同じく血熱や気虚により、後者は血虚、血瘀、腎虚により起こります。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

 

いつもながら専門用語が多くて分かりづらいことと思いますが、このように分類することによって、お一人お一人の原因に合わせた治療が可能になるのですwink

胃について

このごろ突然の雷雨が多く、残念ながら命を落とされた方もいます。皆さんの周囲は何事もないでしょうか?

朝晩は風が涼しくなってきたものの、日中は相変わらず残暑が厳しいですね。最近来院される患者さんの中には、長く続く暑さがこたえたものか、胃の不調を訴える方が多いです。

 

この「胃」は、中医学的にみると、どんな働きがあるのでしょうか。6月22日付のブログ「肝について」でも少し触れましたが、胃は六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の一つで、五行では土に属し、五臓の脾(7月22日付ブログ参照)と表裏関係にあります。(ちなみに五行と六腑では数が合わないので、小腸は「君火」、三焦は「相火」に属すとして、火が二つあります。)

①水穀の受納と腐熟を主(つかさど)る‥‥‥水穀とは飲食物のことです。飲食物を受け入れて、精微(栄養物質)にまで腐熟(腐らせ消化する意)するので、胃は「水穀の海」ともいわれます。飲食物は胃で腐熟されたのち、脾によって精微が吸収されて、肺に運ばれ全身を栄養します(注:肺の機能については後日解説いたします)。胃の受納と腐熟は、脾の運化と密接に関連しており、出生後に栄養を摂取し生命活動を維持するための基本的条件の一つであり、両者をあわせて「脾胃は後天の本」といいます。

②降濁を主り、降をもって和となす‥‥‥飲食物は胃で腐熟され、脾による清(栄養物質)の吸収・運輸を受けたのち、残余の濁(余分な水液や食物残渣)の部分は小腸から大腸へと下行します。飲食物の下方への運行は、胃気の降濁の機能にもとづいており、「胃は降濁を主る」といわれます。胃気の降濁が失調すると、胃気が上逆して受納や腐熟ができなくなるだけでなく、脾の昇清にも影響が及ぶので、「胃は降をもって和となす」ともいわれるのです。

③湿を喜(この)み燥を悪(にく)む‥‥‥胃は「水穀の海」で、受納と腐熟が順調に行われ、水穀の精微を産生して湿潤している状態がよいといえます。つまり、胃は津液で十分に潤されている状態が好ましく、乾燥すると本来の機能が果たせないということです。これとは逆に、表裏関係にある脾は「燥を喜み湿を悪む」といい、運化を主るという性質上、水湿が停滞してはなりません。このように、脾と胃の両者の機能は対立しつつ統一されて、飲食物の消化吸収と精微の運輸を行っています。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

「暑湿の邪」(7月3日付ブログ参照)によって脾が弱り、その不調が胃にも及びます。また冷飲食によって直接ダメージを受けることもあるでしょう。消化の悪いものを避け、何よりも疲労をためないよう、休養も極力とるようにしてくださいsleepy

マッコリ―米―

立秋が過ぎてから、日中は相変わらず暑いものの、朝晩の風は涼しくなってきました。季節は少しずつでも確実に進んでいますねcat

昨夜は久しぶりに飲みに行き、楽しく過ごしましたnotes 最近のお気に入りはマッコリです。とくにカシスマッコリやゆずマッコリなど、フルーツの入ったものがマイブームcute

このマッコリ、主原料はお米です。日本人ならほぼ毎日口にするおなじみの食材ですが、中医学的にみるとどんな効能があるのでしょうか。

 

米は大きく分けて粳米(うるち米)と糯米(もち米)があります。今回は粳米について。

7月6日付ブログ「食養生の基礎知識」でご紹介した五味・五性では、粳米は甘・平です。

主な効能は、補中益気(胃腸を丈夫にして力をつける)、健脾和胃(消化吸収機能を回復させる)、除煩渇(イライラやのどの渇きを解消する)、止瀉痢(下痢を止める)、壮筋骨(体を強くする)。

中医学では「医食同源」として、あらゆる食材に上記のような性味・効能を見出しています。薬やサプリメントに頼る前に、日々の食事で体調管理できるのが理想ですねshine

【参考文献】

 梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005

 夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食療大全,上海科学技術出版社,2006  

節分・土用

明日は立秋。毎日のように続く猛暑も、明日からは残暑となりますdownwardright

昨日か一昨日、テレビのCMで「節分の恵方巻き」と言っていて、この季節に!?と思ったのですが、よく考えたら「節分」とは季節の変わり目。立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日を節分と呼ぶのですね。

節分と関連したものに「土用」があります。丑の日に鰻を食べる夏の土用がよく知られていますが、この土用もすべての季節にあります。夏の土用は立秋の前の18日間を指しますが、立夏の前の18日間が春の土用、立冬の前の18日間が秋の土用、立春の前の18日間が冬の土用です。また、それぞれの最初の日を「土用の入り」といい、最後の日が節分です。

実はこの土用の「土」は、中医学で用いる五行思想「木火土金水」の土に当たります。五行では春は木、夏は火、秋は金、冬は水に割り当てられていますが、それぞれの季節の中間に土が入っているのです。

古くから日本に伝わってきた五行思想が、現代の生活にも息衝いているのですねconfident

中医学でみる「目」

昨日は午後、眼科に行ってきましたeye 近視でコンタクトレンズを使っているので、3カ月ごとの定期検診ですclub

 

さて、6月22日付のブログで、目の機能は肝が主に関わっていると紹介しましたが、実際には五臓六腑の精気はみな目に上注(読んで字のごとく上方へ注ぐ意)していますので、目の異常や変化は肝だけでなく他臓腑の病変も反映します。五臓それぞれの反映される部位を以下に挙げます。

◎肝:黒睛(せい)=いわゆる「黒目」の部分。解剖学上の角膜部分を指します。

◎心:内外眥(し)=内眥・外眥を指し、目頭と目尻のことです。

◎脾:眼瞼(けん)=上下のまぶた。

◎肺:白睛=いわゆる「白目」の部分。解剖学上の眼球結膜と強膜を含みます。白睛と黒睛とは接しているので、その病変は互いに影響し合います。

◎腎:瞳孔=黒目の中心部分。光はここから眼球内に入ります。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

目の異常については、眼科を受診していただくのが基本ではありますが、この分類を踏まえれば、直接患部に触れなくても、対応した経絡や経穴(ツボ)を利用して鍼灸での治療もできますshine

脾について

昨日から今朝にかけて、ずいぶん風が涼しく気温も下がりましたねdown しかし今日は二十四節気の一つ「大暑」、日中はしっかり例年並みの暑さになりましたsweat01

今月9日付のブログで「夏の食養生」をご紹介しましたが、中医学では五臓のうち、飲食や消化・吸収に関してもっとも重要な役割を担うのがです。先月の肝と同様、その主な生理機能を解説いたします。

 

①運化を主(つかさど)り、後天の本である‥‥‥「運」は運転・輸送、「化」は消化・化生(ある物質から他の物質を生成する)の意味です。脾は胃が飲食物を消化吸収するのを助け、それによってできた精微物質(栄養物質)を全身に運ぶ機能があります。また肺や腎と協同して、体内の水液代謝も維持しています。「後天」とは、出生後の人体の諸状況の総称で、人間が生まれてからの栄養・生長・発育は脾胃の消化吸収機能に依存します。

②昇清を主る‥‥‥脾気が清(精微物質)を上昇・運輸することを指します。上とは心・肺のことで()、心肺に運ばれた栄養物質は気血に化生され、さらに全身に行き渡ります。

③生血・統血する‥‥‥脾胃が運化した精微物質は血を化生する源であり、また脾気は血液が脈外にあふれ出ないよう統轄していることを示します。脾の働きが低下すると、血液が不足して頭のふらつき・目のかすみ・顔面や口唇が淡白になるなどの血虚が生じ、また出血しやすくなるため、皮下出血・血尿・血便・不正性器出血などが起こります。

④肌肉(きにく)・四肢を主る‥‥‥脾が吸収した精微が全身に輸送されて肌肉(筋肉・軟部組織)に栄養を与え、豊満で健全にします。同様に、四肢も精微物質の栄養を受けて運動をすることができるのです。そのため脾の運化が失調すると、肌肉は痩せ四肢はだるく無力になります。

⑤口に開竅(かいきょう)する‥‥‥脾の機能は味覚・食欲と密接に関係しています。脾が虚すると食欲がなくなり、味も感じられなくなります。

⑥思を主る‥‥‥「思」は思考・思慮のことで、脾の生理機能と深い関係があります。思考活動は脾の運輸する精微が基礎的物質になっています。思慮過度や思いが遂げられない時は、気の運行を滞らせ、進行すると食欲不振や腹が張って苦しいなどの症状が現れます。

「三焦(さんしょう)」といって、人体の臓腑を上・中・下の三つの部分に分ける考え方。上焦は心・肺、中焦は脾・胃、下焦は肝・腎・大腸・小腸・膀胱の機能に相当します。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006  

 

肝と同じく、ごく基本的なことのみですが、紹介させていただきましたdelicious

冬病夏治(冬の病気は夏に治す)

今日は中国・四国地方から近畿、東海、関東甲信まで梅雨明けが発表されましたsun 私の郷里の群馬では最高気温39度sign03 暑さもこれからが本番ですwobbly

烟台中医医院.JPGのサムネール画像さて私が以前、研修で訪れた中国では、この暑い盛りの時季を利用して、冬に発作が起きたり悪化したりする病気を治療しようという考え方がありました。これが今日のタイトル「冬病夏治」です。 

右の2点の写真は、いずれも研修先の山東省の煙台(えんたい)市中医病院で撮影したものです。5年前の8月半ばで、ちょうど鍼推科(鍼灸・推拿〈すいな≒マッサージ〉科)でも行われていました。

「患者心得」によると、夏季「三伏(さんぷく)」の隆盛の陽気を利用する、とあります。この三伏とは初伏・中伏・末伏の総称で、  夏の酷暑の期間を指します。夏至後の第3の庚(かのえ)の日が初伏、第4の庚の日が中伏、立秋後の第1の庚の日が末伏です。今年はちょうど明日7月18日が初伏に当たりますので、「冬病夏治」を始めるのに絶好の時機です!  

冬病夏治.JPGのサムネール画像

 

では具体的にどんな疾患が「冬病」に入るのでしょうか? この病院では、慢性気管支炎、気管支喘息、肺気腫、慢性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、肩関節周囲炎(いわゆる四十肩・五十肩)、リウマチ、また寒さで悪化する胃腸病や頸肩腰下肢痛などを適応症としています。

冬になると調子の悪くなる方は、この機会に鍼灸治療を積極的に受けてみてはいかがでしょう。きっと半年後には、症状が楽になっていると思いますup 

夏の食養生

昨日は風がさわやかで涼しい一日でしたが、今日は暑くなりましたねsun 前回の内容を踏まえて、夏バテ防止の食養生法をご紹介します。

夏の食養生の原則は、「暑・湿を取り除く」ことと、「のどの渇きや脱水状態を止める」ことです。「湿」と「渇」では矛盾しているように見えますが、前々回のブログにある便秘と下痢の例と同様、暑と湿それぞれの強さによります。また湿邪によって下痢が起これば脱水状態になることもありますし、また消化・吸収機能の低下により水分が体の中で偏在すると、おなかに水が溜まっているのに口は渇く、ということもあります。

暑ければ冷たい物を取ればいいと考えがちですが、少量なら問題なくても、過剰に取れば胃腸の機能を低下させ夏バテ・夏カゼを引き起こします(体脂肪も増えます!)。そこで、前回の「四性」のうち涼・寒の性質の物が登場です。基本的に夏に旬を迎える物、南国で取れる物は涼性・寒性であることが多いです。また平性(温熱でも寒涼でもない)であっても、熱を冷ます作用をもつ物もあります。

「五味」では酸味・甘味・苦味を中心に、鹹味も適宜足すのがよいでしょう。辛味は、冷房や冷飲食などで体が冷えたとき以外あまり必要ないので、取りすぎに気をつけましょう。以下に夏に適した代表的な食材を挙げますが、これら以外はダメというわけではなく、またたくさん食べれば食べるほどよいというわけでもありません。当然ながら温かい状態か冷たい状態か、調理法によっても若干性質が変わってきますので、バランスを考えて上手に取り入れましょう。

 

〔夏に食べるとよい物〕 品目(五性/五味) ※五性・五味には文献により多少の異同があります。

ぱキキュウリ(涼・寒/甘)、トウガン(微寒/甘)、ニガウリ(寒/苦・微甘)、レンコン(涼・寒/甘)、ナス(寒・涼/甘)、トマト(微寒/甘・酸)、チンゲンサイ(涼/甘・苦・辛)、タケノコ(寒/甘・微苦)、ソバ(涼/甘)、豆腐(平・涼/甘)、緑豆(涼/甘)、スイカ(寒/甘)、バナナ(寒/甘)、メロン(寒/甘)、オレンジ(寒/甘・酸)、ビワ(平・微涼/甘・酸)、マンゴー(涼/甘・酸)、パイナップル(平/甘・微酸)、スモモ(平/甘・酸)、ウナギ(平・微寒/甘)、ハモ(寒/甘)、アワビ(平/鹹)、アサリ(微寒/鹹)、コンブ(寒/鹹)ウナギ、ハモ、アサリ、 ウナギ、ハモ、アサリ、 

 

なお、主食となる米や小麦、イモ類などは、どの季節でも適しています。飲み物は、緑茶(寒/苦・甘)やウーロン茶(涼・平/苦・甘)が夏にはお勧めです。日常よく食べる食材なら、問題になるような物はほとんどありませんが、夏はどうしても消化機能が低下しがちですので、脂身の多い肉や揚げ物、バターやクリームたっぶりの洋菓子など「こってり」メニューは控えめにしましょうcake

 

【参考文献】

 梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005 

 夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食療大全,上海科学技術出版社,2006