治療対象となる疾患
鍼灸には鎮痛、自律神経系・内分泌系(ホルモン)の調節、血流の調節や免疫機能の変化などの作用があり、機能的な疾患が最も効果的な適応症です。器質的な疾患(変形や欠損のある場合)であっても、上記の作用により改善がみられるものは適応症となります。
世界保健機関(WHO)が1979年に鍼の適応となるとした43疾患を、以下に挙げます。しかし、これらは臨床経験に基づいたものであり、必ずしもこれらに限定されているわけではありません。
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上気道疾患
①急性副鼻腔炎 ②急性鼻炎 ③感冒 ④急性扁桃炎 -
呼吸器疾患
①急性気管支炎 ②気管支喘息(小児が最も有効、合併症がないもの) -
眼疾患
①急性結膜炎 ②中心性網膜炎 ③近視(小児) ④白内障(合併症のないもの) -
口腔疾患
①歯痛 ②抜歯後疼痛 ③歯肉炎 ④急性・慢性咽頭炎 -
胃腸疾患
①食道・噴門痙攣 ②しゃっくり ③胃下垂 ④急性・慢性胃炎 ⑤胃酸過多症 ⑥慢性十二指腸潰瘍(除痛) ⑦急性十二指腸潰瘍(合併症のないもの) ⑧急性・慢性腸炎 ⑨急性細菌性赤痢 ⑩便秘 ⑪下痢 ⑫麻痺性イレウス -
神経・筋・骨疾患
①頭痛 ②片頭痛 ③三叉神経痛 ④顔面神経麻痺(初期、3~6ヵ月以内のもの) ⑤脳卒中後の不全麻痺 ⑥末梢神経障害 ⑦急性灰白髄炎(ポリオ)の後遺症 (初期、6ヵ月以内のもの)⑧メニエール病 ⑨神経因性膀胱 ⑩夜尿症 ⑪肋間神経痛 ⑫頚腕症候群 ⑬五十肩 ⑭テニス肘 ⑮坐骨神経痛 ⑯腰痛 ⑰変形性関節症
ほかに、米国国立衛生研究所(NIH)の合意声明書(1998年2月最終版)では、鍼が有効な疾病として、成人の術後の、あるいは薬物療法時の吐き気や嘔吐、妊娠時の悪阻(おそ=つわり)、歯科の術後痛を挙げています。 また、補助的ないしは代替的治療法として鍼を利用すれば役立つ可能性があるものとして、薬物中毒、脳卒中のリハビリテーション、頭痛、月経痛、テニス肘、線維性筋痛、筋筋膜性疼痛、変形性関節炎、腰痛、手根管症候群、喘息を挙げています。
【参考文献】 社団法人東洋療法学校協会編、教科書執筆小委員会著『はりきゅう理論』 医道の日本社、2002年
一般的には、発症してから間がないほうが治りやすく、長期間経過したものほど治癒に時間がかかる傾向がありますが、一概にはいえません。長年の持病であっても、短期間で良くなることもあります。また、1回目の治療で効果が実感できなくても、2回目、3回目で改善してくる場合もあります。
いずれにしても、気になる症状を放っておくと、治りやすい時機を逃してしまったり、より深刻な症状に発展してしまうことも残念ながらあります。東洋医学ではよく「未病を治す」といいますが、皆様の生活の質を高めるために、ぜひ一度ご相談ください。