胃について

このごろ突然の雷雨が多く、残念ながら命を落とされた方もいます。皆さんの周囲は何事もないでしょうか?

朝晩は風が涼しくなってきたものの、日中は相変わらず残暑が厳しいですね。最近来院される患者さんの中には、長く続く暑さがこたえたものか、胃の不調を訴える方が多いです。

 

この「胃」は、中医学的にみると、どんな働きがあるのでしょうか。6月22日付のブログ「肝について」でも少し触れましたが、胃は六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の一つで、五行では土に属し、五臓の脾(7月22日付ブログ参照)と表裏関係にあります。(ちなみに五行と六腑では数が合わないので、小腸は「君火」、三焦は「相火」に属すとして、火が二つあります。)

①水穀の受納と腐熟を主(つかさど)る‥‥‥水穀とは飲食物のことです。飲食物を受け入れて、精微(栄養物質)にまで腐熟(腐らせ消化する意)するので、胃は「水穀の海」ともいわれます。飲食物は胃で腐熟されたのち、脾によって精微が吸収されて、肺に運ばれ全身を栄養します(注:肺の機能については後日解説いたします)。胃の受納と腐熟は、脾の運化と密接に関連しており、出生後に栄養を摂取し生命活動を維持するための基本的条件の一つであり、両者をあわせて「脾胃は後天の本」といいます。

②降濁を主り、降をもって和となす‥‥‥飲食物は胃で腐熟され、脾による清(栄養物質)の吸収・運輸を受けたのち、残余の濁(余分な水液や食物残渣)の部分は小腸から大腸へと下行します。飲食物の下方への運行は、胃気の降濁の機能にもとづいており、「胃は降濁を主る」といわれます。胃気の降濁が失調すると、胃気が上逆して受納や腐熟ができなくなるだけでなく、脾の昇清にも影響が及ぶので、「胃は降をもって和となす」ともいわれるのです。

③湿を喜(この)み燥を悪(にく)む‥‥‥胃は「水穀の海」で、受納と腐熟が順調に行われ、水穀の精微を産生して湿潤している状態がよいといえます。つまり、胃は津液で十分に潤されている状態が好ましく、乾燥すると本来の機能が果たせないということです。これとは逆に、表裏関係にある脾は「燥を喜み湿を悪む」といい、運化を主るという性質上、水湿が停滞してはなりません。このように、脾と胃の両者の機能は対立しつつ統一されて、飲食物の消化吸収と精微の運輸を行っています。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

「暑湿の邪」(7月3日付ブログ参照)によって脾が弱り、その不調が胃にも及びます。また冷飲食によって直接ダメージを受けることもあるでしょう。消化の悪いものを避け、何よりも疲労をためないよう、休養も極力とるようにしてくださいsleepy