10月は乳がん月間
10月は乳がんの早期発見、早期治療を啓発するための「乳がん月間」で、ピンクリボン運動が近年よく知られてきました NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)のホームページによると、乳がんは1996年より日本人女性の悪性腫瘍罹患率で第1位となり、2004年には日本女性の16人に1人が乳がんにかかるという発生率となっています。
乳がんは進行の遅いがんで、早期に発見・治療すればほとんどが治るがんであるにもかかわらず、日本では乳がんによる死亡者が増え続けています。これはアメリカやイギリスなど他の先進国に比べて、定期的に検診を受ける人がまだまだ少ないためです。20歳を過ぎたら1、2年に一度は必ず検診を受け、月1回のセルフチェックも忘れずにしましょう。
私自身も数年前、自分で左胸にしこりを見つけ、乳腺外科を受診しました。検査の結果、「乳腺線維腺腫」という良性の腫瘍で、将来がんになるようなものではありませんでしたが、これとは別にがんができた場合に見落とす危険性があるということで、以後1年に1回、確認のため定期検診を受けています。
なお少数ですが、男性でも乳がんになることがあります。乳がん発症者のうち1%程度が男性で、100人に1人と考えれば少ないとは言いきれません。若年でも発症する女性と違い、男性は60歳以上で発症するのが一般的で、しこりの部位も乳輪下に触れます。転移した場合はわきの下に触れることもあり、いずれにしても見つけ次第ただちに受診してください。
頭痛の分類(東洋医学編)
前回は現代医学からみた頭痛の分類をご紹介しましたので、今回は中医学的分類です
まず、頭痛に限らず「痛み」について、中医学では「不通則痛、通則不痛」という原則があります。書き下すと「通じざれば則ち痛み、通ずれば則ち痛まず」となりますが、これは経絡の気血の運行が障害されるとその部分に痛みが発生し、運行が回復すれば痛みはなくなるという意味です。そのため治療においては気血を順調に巡らせることを目標に、足りないもの(虚)は補い、過剰なもの(実)は取り去るように、手技を工夫し同時に生活指導もします。
頭痛の場合も、痛む部位や性状、増悪(症状がひどくなる)・寛解(症状が落ち着く)因子などから病型を判断し、治療方針を決めていきます。中医学での分類は何種類かありますが、病因別では①外感頭痛と②内傷頭痛とに分かれます。
①外感頭痛‥‥‥外邪を感受して起こる頭痛。特徴的な症状は、頭痛が持続して止まない、発病は比較的急激であることです。主な外邪によるものを以下に挙げます。
a.風寒頭痛‥‥‥風寒の邪気を感受して起こります。症状は、頭痛が項背(うなじから背中)にまで及ぶ、悪寒、悪風(風に当たるのを嫌がる)、関節の痛み、鼻閉(鼻づまり)、サラサラの鼻水が流れる、口の渇きはないなど。
b.風熱頭痛‥‥‥風熱の邪気が人体を侵すことで起こります。症状は、頭が張って痛む、発熱、悪風、鼻閉、濁った濃い鼻水が流れる、顔面紅潮、目の充血、口が渇いて水を飲みたがる、便秘、尿が濃くなるなど。
c.風湿頭痛‥‥‥風湿が人体を外襲(外から襲う)することや、風邪(ふうじゃ)が侵襲して湿濁(濁った水液)が身体の上部を覆って起こります。症状は、頭が重く沈むように痛む、頭を布で包んでいるような感覚がある、体が重だるい、胸苦しい、食欲不振、吐き気、排尿困難、下痢など。
②内傷頭痛‥‥‥臓腑機能の失調や気血不足、痰湿瘀滞(濁った水液が停滞する)が原因となって起こる頭痛。特徴的な症状は、発病が緩慢で頭痛は起こったり消えたりし、臓腑機能の失調症状が伴います。主なものは以下のとおりです。 ずずとくちょう消えたりだいひょ
a.肝陽頭痛‥‥‥肝陽(肝の陽気)が上亢(じょうこう=上りたかぶる)して起こります。症状は、めまいを伴う頭痛、頭痛の多くはこめかみや頭頂部に起こる、イライラして怒りっぽい、熟睡できない、顔面紅潮、口が苦い、脇腹が張って痛むなど。(※肝については6月22日付ブログ参照)
b.腎虚頭痛‥‥‥腎が虚しているために髄海(脳)が不足して起こります。症状は、空虚感を伴う頭痛、めまいがしてクラクラする、耳鳴、腰や膝がだるく力が入らない、男子では遺精(性行為外で不随意に精液を漏らす)、女子では帯下(おりもの)など。(※腎については9月1日付ブログ参照)
c.血虚頭痛‥‥‥血虚のために上部(頭部)に栄養を供給できなくなって起こります。症状は、頭痛が長く続いて絶えない、めまいがしてクラクラする、顔面が白くむくむ、だるさなど。
d.痰濁頭痛‥‥‥痰濁(水液代謝障害によって形成される粘っこく濁った物質)が頭部を覆って起こります。症状は、頭痛に伴って頭がボーッとする、頭重感、胸苦しい、胃がもたれる、吐き気、痰を吐くなど。
e.瘀血頭痛‥‥‥瘀血(おけつ)とは滞った血のことです。頭部の外傷や、長期にわたる頭痛によって、瘀血が停滞して起こります。症状は、頭痛が長期間治らない、刺すような痛み、痛む部位は固定して移動しない、顔面は黒ずんで暗いなど。
【参考文献】
高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006
細かい説明は省かせていただきましたが、実際にはこのほかに頭痛の起こる部位(前頭・側頭・後頭など)によっても区別し、治療方針を立てます。現代医学の場合と同様、人により複数の要因が絡み合っていることもありますので、発症から現在までの経緯をお聞きしながら優先順位を決め、少しでも早く患者さんの苦痛が楽になるよう施術に当たっています
頭痛の分類(現代医学編)
今日は彼岸の中日、秋分の日でしたね 近年はずっと9月23日でしたが、22日になるのは明治29年(1896年)以来116年ぶりだそうです
さて前回予告しました「頭痛」について、今回は現代医学での分類をご紹介いたします。頭痛には急性のもの(くも膜下出血や脳出血、髄膜炎など)と慢性のものとがありますが、ここでは鍼灸の臨床で主に見受けられる慢性頭痛を取り上げます。またその中でも、脳腫瘍や頭頸部の外傷・血管障害、感染症、目や鼻の障害等々、頭痛の原因となる疾患がない「一次性頭痛」について解説いたします。(ちなみに原因疾患があれば「二次性頭痛」といいます。)
国際頭痛学会(IHS)による国際頭痛分類第2版(ICHD-Ⅱ、2003年)では、一次性頭痛は①片頭痛、②緊張型頭痛、③群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛、④その他の一次性頭痛に分けられています。代表的な①~③について見てみましょう。
①片頭痛‥‥‥文字どおり頭の片側に起こる頭痛で、ズキンズキンとした拍動性(心臓の拍動・脈拍に伴って変化する)の、中等度~重度の強さの痛みが4~72時間持続します。日常的な動作や入浴によって痛みが増し、悪心(胸のむかつき)や嘔吐、光過敏・音過敏を伴います。片頭痛には大きく分けて「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の2タイプがあります。この「前兆」とは、頭痛が始まる直前または同時期に起こるもので、視覚症状(「閃輝暗点」というキラキラ光るジグザグの点や線が見えたり、視界の一部が見えなくなったりする)、感覚症状(チクチク感や感覚が鈍くなる)、言語症状(失語性の言語障害)です。これらはいずれも一過性のもので、持続時間は5分以上60分以内とされています。
②緊張型頭痛‥‥‥一次性頭痛の中で最も一般的なタイプの頭痛で、頭の両側に起こります。圧迫感または締め付け感(非拍動性)の、軽度~中等度の強さの痛みが数分~数日間持続します。日常的な動作によって悪化することはなく、入浴したりリラックスすると改善するのが片頭痛との違いです。悪心はありませんが、光過敏または音過敏を伴うことがあります。発作の起こる頻度により、「稀発反復性緊張型頭痛」(1ヵ月に1日未満〈年間12日未満〉の頻度で発現する頭痛が10回以上)、「頻発反復性緊張型頭痛」(3ヵ月以上にわたり、平均して1ヵ月に1日以上15日未満〈年間12日以上180日未満〉の頻度で発現する頭痛が10回以上)、「慢性緊張型頭痛」(3ヵ月以上にわたり、平均して1ヵ月に15日以上〈年間180日以上〉の頻度で発現する頭痛)の3タイプに分かれます。
③群発頭痛‥‥‥発作が群発して起こる「群発期」と発作のない「寛解期」がある頭痛で、一側性の重度の頭痛発作が眼窩(頭蓋骨の眼球が入る部分のくぼみ)部、眼窩上部、側頭部のいずれか一つ以上の部位に現れ、15~180分間持続します。発作頻度は2日に1回~1日8回です。発作時には頭痛と同じ側に結膜充血や流涙、まぶたの腫れなどの目の症状、鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状が一つ以上伴います。群発期は数週~数ヵ月間続き、寛解期は数ヵ月~数年間続きますが、患者の約10~15%は寛解がない慢性症状を呈します。(なお三叉神経・自律神経性頭痛については、やや専門的になりすぎますので割愛させていただきます。)
以上、それぞれに症状が少しずつ違い、適する薬も違ってきます。また複数の種類の頭痛が混在する場合もあります。ストレスや睡眠不足あるいは寝すぎ、アルコールなど原因となる物事をできるかぎり避け、薬を服用する場合も専門医の指導に従ってください。自己判断で漫然と頭痛薬を飲み続けると、「薬物乱用頭痛」を引き起こし、ますます治りにくくなってしまいます。もちろん鍼灸も、頭痛の緩和に役立ちます
風疹 大流行中
6月4日付の本ブログでも書きましたが、流行中の風疹がますます猛威を振るっているようです。
国立感染症研究所によると、今年の患者の報告は8月下旬までで、すでに昨年1年間の4倍近くに上っているとのこと。地域別では東京が最多で、次いで大阪、兵庫と続いており、人口の密集した都市部で特に多くなっています。
風疹は根本的な治療法がなく、対症療法中心になります。飛沫により容易に感染するため、予防にはワクチン接種が欠かせません。とりわけ心配されるのは妊婦で、感染すると胎児に障害(先天性風疹症候群)が発生する恐れがありますので、妊娠を希望する女性やその家族も、免疫がついていなければ早めに接種する必要があります。弱毒生ワクチンのため妊娠中は接種できず、接種後2~3カ月は避妊しなければなりません。
20~40代の男性は予防接種率が低い(詳しくは6月ブログ参照)ため、特に要注意です。男性に限りませんが、赤い発疹や高熱、関節痛などの症状が出たら、ただのかぜと過信せず必ずマスクを着用し、病院を受診する際にも周囲にうつさないよう、十分に用心しましょう。
中医学でみる「月経」
今回は、女性には避けて通れないもの、「月経」の話題です
前回同様、私事で恐縮ですが、今月は珍しく生理周期が乱れて平常より10日近く遅れました。長引く猛暑で体力が低下したためと思われますが、中医学では月経の不調をどのように捉えているのでしょうか?
月経は、中医学用語でも「月経」です。周期のほか、経血の色や量、質(サラサラであるか粘り気があるか)も重視します。正常な色は鮮紅色~暗紅色で、終始薄い色の出血しかない場合は血虚(貧血)が考えられます。量は基準が難しいですが、平均的には3~5日間持続し、初めと終わりが少なく中間の日が多くなります。質は薄い(ポタポタ、タラタラという感じ)のが正常で、血塊(ドロッとした塊)が出るのは血瘀によるものです。
周期は28日前後が正常ですが、これより7日以上短いのが「月経先期」で、血熱あるいは気虚により出血の制御ができなくなったものです。また7日以上長いのが「月経後期」で、血虚や寒邪により血が滞るために起こります。さらに周期が不規則になるのは「月経先後不定期(無定期とも)」といい、気血不調和と脾・腎の虚弱によるものが多いです。
一方、周期が正常でも経血量が通常より多いものを「月経過多」、少ないか期間が短いものを「月経過少」といいます。前者は「月経先期」と同じく血熱や気虚により、後者は血虚、血瘀、腎虚により起こります。
【参考文献】
神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995
高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006
いつもながら専門用語が多くて分かりづらいことと思いますが、このように分類することによって、お一人お一人の原因に合わせた治療が可能になるのです
マグネシウム
昨日は二十四節気の処暑でした。朝晩は風がいくらか涼しくなり、一昨日の夜には虫の音が聞こえました……が、日中の猛暑はなかなか治まりませんね ゲリラ豪雨も頻繁で、今日も昼過ぎに突然の大雨と雷 1時間足らずでやんだものの、今度は日が出て蒸し暑さが増しました
まだまだ熱中症に対する注意も必要です。私は今夏、スポーツドリンクの類をよく飲むようになりましたが、熱中症予防のほかに思わぬ効果がありました。
それは、「お通じが良くなった」ことです。もともと頑固な便秘ではないのですが、ときどき出にくくなることがありました。それがこの夏はわりと「快腸」なのです
おそらく飲料に含まれるミネラル、とくにマグネシウムが効いているのではないかと思います。5月26日付のブログでも少し触れた「塩類下剤」の主成分がマグネシウムです。浸透圧を利用して、腸管内に水分を引き込み、便を軟らかくして出しやすくする作用があります。
便秘にお悩みの方は、一度試してみてはいかがでしょう?(ただし冷蔵庫から出してすぐ飲むと冷たすぎるので、私は甘みの緩和も兼ねて湯冷ましを少々足します)
頭の重量
先月見つけたツバメの巣を今日覗いてみたら、もぬけの殻でした 無事に巣立ったと思われます
ところで、見上げる動作をすると後ろによろめくことがあり、そんな時に頭の重みを感じます。
一般に人間の頭部は、体重のおよそ10%の重さがあります。体重50㎏の人ならば約5㎏、結構な重さですね。
これを支えるために、首や肩の筋肉は日々緊張しています。居眠りの時に力が抜けると、首がガックリと前後左右に揺れることからも分かりますね。
日頃から猫背の人や、パソコン作業などで前のめりの姿勢になったり、携帯電話やスマートフォンを覗き込む時間が長かったりすると、首が前に傾いた状態が続き、首の筋肉に過剰な負担がかかって肩こりや頭痛などが生じやすくなります。
姿勢が悪くなると、脊柱全体のバランスが崩れ、腰痛や膝痛まで引き起こすこともあります。背筋を伸ばし、時々ストレッチをしましょう もちろん鍼で筋肉の緊張を緩和させるのも効果的です
2011年の平均寿命
厚生労働省が26日に発表した「平成23年簡易生命表」によると、日本人の2011年の平均寿命は女性が85.90歳で、前年を0.40歳下回り、1985年以来続いていた長寿世界一の座を27年ぶりに明け渡したそうです。男性は79.44歳で、前年より0.11歳短くなりました。1位は男女とも香港で、男性80.5歳、女性86.7歳。
昨年は東日本大震災がありましたから、当然その影響は大きいだろうと思っていましたが、前年からすでに低下し始めていたとのこと。とくに女性の場合、20代での自殺が増えたことも一因と知って、暗澹たる気持ちになりました。
いろいろなことが積み重なって、将来に希望が持てない、光が見えないような状況に陥ってしまうと、もう「死」しか考えられなくなるのでしょう。そうなる前に、誰かに苦しみを打ち明けて、何とか生きる道を探してほしい、踏みとどまってほしいと切に願います。あなたが自ら死を選べば、遺された家族や友人たちは一生、悲しみと後悔を抱え続けることになります。あなたは決してひとりではありませんと、いま悩んでいる人に伝えたいです。