杏花鍼灸院ブログ

秋の食養生

今日は秋の土用入りですmaple 8月6日付ブログでも書きましたが、立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前18日間が土用ですので、今日から18日後には立冬……早いですね~dash

さて、夏の食養生(7月9日付)と同様、秋の食養生もご紹介したいと思います。中医学では秋の気候の特徴は「燥」、つまり乾燥とされていますが、日本の場合は「秋の長雨」(秋雨前線)や台風シーズンとも重なるので、大陸とはやや異なります。しかしながら、夏に比べればぐっと湿度が下がっていますので、やはり乾燥対策は必要です。

秋は五行では、対応する五臓は(10月2日付)ですので、体の中でも特に呼吸器や皮膚への乾燥対策が中心となります。そのため秋の食養生の原則は「肺を滋養し、津液を増やして体を潤す」ことです。代表的な食物を以下に挙げます。 

 

〔秋に食べるとよい物〕 品目(五性/五味)  ※五性・五味には文献により多少の異同があります。

ピーナツ(平/甘)、ギンナン(平/甘・苦・渋)、松の実(微温/甘)、ヤマノイモ(平/甘)、サツマイモ(平/甘)、ニンジン(微温・平/甘・苦)、ダイコン(涼・平/辛〈生〉・甘〈加熱〉)、ホウレンソウ(涼/甘)、ハクサイ(涼・平/甘)、ノリ(寒/甘・鹹)、アンズ(温/酸・甘)、カリン(平/酸・渋)、ブドウ(平/甘・酸)、ミカン(平/甘・酸)、ユズ(寒/甘・酸)、イチジク(平/甘)、レモン(平/酸・甘)、ビワ(平・微涼/甘・酸)、ナシ(涼・寒/甘・微酸)、柿(寒/甘・渋)

特にピーナツや松の実、アンズ、ナシなどは空咳に効きます。果物はのどの渇きを潤す作用があり、基本的に旬のものを選ぶとよいですが、寒性のものは食べすぎると体を冷やしますので、適度に取りましょうapple

 

【参考文献】

 梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005

 夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食療大全,上海科学技術出版社,2006 

RSウイルス

このところ「RSウイルス(respiratory syncytial virus)感染症」が流行しています。これは乳児がかかると肺炎や気管支炎など重症化しやすく、インフルエンザ並みに警戒を要する感染症です。今年は例年より早く流行が始まっており、今月7日までの1週間の患者数が、統計を取り始めた平成15年以降で最悪の多さで、去年の同時期の2.5倍にもなるそうです。

RSウイルス感染症の流行は例年12月ごろにピークとなるので、今後もさらに広がっていくと思われます。症状は発熱、鼻水、せきなど、かぜやインフルエンザとあまり変わりませんが、治療薬がなく対症療法が中心となるため、何より予防が肝心です。

RSウイルスは、2歳までにほぼすべての乳幼児が感染するありふれた呼吸器感染症です。成長すると軽い鼻かぜ程度で済みますが、0歳児や基礎疾患がある子供が感染すると重症化する恐れがあります。とくに初感染では、肺炎や脳炎を起こすこともあります。

家庭に乳幼児がいる人や、接する機会の多い人は、かぜの症状があれば手洗いを徹底し、マスクの着用も忘れずにしましょう。大阪府は現在、東京都、福岡県に続いて3番目に患者数が 多く、他人事と思わないことが大切です。

実は私自身も生後1ヵ月のころ(12月)、RSウイルスが原因と思しき肺炎を起こし、一時は命も危ぶまれたそうです。助かったことに感謝し、今後は自分が感染源にならないよう心しますhospital

ブルーライト

__.JPG……ヨコハマkaraokeという歌謡曲がありましたが、それではございません。メガネのお話ですeyeglass

ふだんコンタクトレンズを着けているうえ、パソコンも毎日使っているため、どうしても目が疲れます。ツボ押しも良いのですが、未然に少しでも予防できないかと思い、このほど「PCメガネ」を購入しましたpc

このところ徐々に普及してきているので、ご存じの方も多いと思いますが、これはパソコンやスマートフォンなどのLED液晶画面から出る「ブルーライト(青色光)」を遮断して、目の疲れを軽減してくれるものです。

このブルーライトとは、可視光線の中で最も波長が短く(=エネルギーが高く)紫外線に近い強さの光で、眼球の角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで届くそうです。また太陽光にも含まれていることから、夜にブルーライトを多く浴びてしまうと体内時計が狂い、不眠の原因にもなります。夜遅くにテレビを見たりパソコンを使ったりすると、寝つきが悪くなるのはこのためです。

パソコン使用に伴う疲れ目や肩こり、頭痛といった症状は、室内の照明や画面を見る角度、姿勢など他の要因も絡み合いますが、まずこのPCメガネでどこまで改善できるか、自分の体で実験してみますeye

今日は患者さん

さっきは久々の雷雨でしたthunderrain 皆さんは濡れませんでしたか?

今日はかかりつけの鍼灸院で治療を受けてきました。鍼灸の学生時代からお世話になっている先生で、定期的に診てもらっています。

これは体調管理のためであるとともに、自分が患者の立場になることによって、ふだん当院に来てくださる患者さんの気持ちを、改めて想像するためでもあります。どういう風にしてもらうと嬉しく感じるか、逆にどういうことはしてほしくないか……。

もちろん性格や感じ方、鍼灸治療に期待するもの等は人それぞれですので、すべての方のすべての思いを知ることはできませんが、施術する側の立場にのみい続けると、つい自分の都合だけで仕事を進めてしまうことにもなりかねません。少なくとも自分が嫌だと思うことはしないよう、言動に気を付けていますthink

秋の花粉症

今日は二十四節気の寒露、野草に冷たい露が宿るころです(今年は体育の日でもありますが、個人的には特に縁がありません…shoe)。朝晩肌寒く感じる日も増えてきて、かぜ気味の人も出てきていることでしょう。けれども、中には花粉症である可能性もあります。

夏から秋にかけて花粉症の原因となるのは、「草本(そうほん)花粉」といわれるイネ科(ススキ・カモガヤ・オオアワガエリなど)やキク科(ヨモギ・ブタクサ・セイタカアワダチソウ・コスモスなど)、クワ科(カナムグラ)、イラクサ科(イラクサ)などの花粉です。これらの植物は道端や空き地、公園など身近な場所に生えていて、日本全国に分布しています。

花粉症の主な症状は、水っぽい鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどで、特に晴れた日にひどくなります。かぜであれば鼻水が黄色で粘っこく、比較的高い熱が出たり、食欲が落ちたりし、目のかゆみや天候による症状の変化はありません。

春の花粉症と同様、秋の場合も一度発症すると毎年悩まされることになりますが、春のほうの原因となるスギやヒノキと違い、秋の草本花粉は飛散する範囲が数十メートルと狭いので、河川敷や雑草の多い場所をなるべく避け、マスクやメガネなどで防御しましょう。もともと春の花粉症や気管支喘息などのアレルギー症状がある人は、特に注意が必要です。

10月は乳がん月間

10月は乳がんの早期発見、早期治療を啓発するための「乳がん月間」で、ピンクリボン運動が近年よく知られてきましたribbon NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)のホームページによると、乳がんは1996年より日本人女性の悪性腫瘍罹患率で第1位となり、2004年には日本女性の16人に1人が乳がんにかかるという発生率となっています。

乳がんは進行の遅いがんで、早期に発見・治療すればほとんどが治るがんであるにもかかわらず、日本では乳がんによる死亡者が増え続けています。これはアメリカやイギリスなど他の先進国に比べて、定期的に検診を受ける人がまだまだ少ないためです。20歳を過ぎたら1、2年に一度は必ず検診を受け、月1回のセルフチェックも忘れずにしましょう。

私自身も数年前、自分で左胸にしこりを見つけ、乳腺外科を受診しました。検査の結果、「乳腺線維腺腫」という良性の腫瘍で、将来がんになるようなものではありませんでしたが、これとは別にがんができた場合に見落とす危険性があるということで、以後1年に1回、確認のため定期検診を受けています。

なお少数ですが、男性でも乳がんになることがあります。乳がん発症者のうち1%程度が男性で、100人に1人と考えれば少ないとは言いきれません。若年でも発症する女性と違い、男性は60歳以上で発症するのが一般的で、しこりの部位も乳輪下に触れます。転移した場合はわきの下に触れることもあり、いずれにしても見つけ次第ただちに受診してください。

肺について

もう10月に入り、朝晩はめっきり秋の涼しさになりましたhorse 長引いた猛暑の疲れが出てくるこの頃、軽いかぜ引きさんもちらほら見受けられますeye

今回は、秋と同じく五行の金に属する五臓のについて、主な生理機能を解説いたします。これまでご紹介した肝、脾、腎と同様、現代医学的な臓腑と重なる部分もあれば、中医学独特の考え方も併せ持っています。

 

①気を主(つかさど)り、呼吸を司る‥‥‥「気を主る」とは、「呼吸の気を主る」と「一身の気を主る」という二つの面があります。「呼吸の気を主る」というのは、肺の呼吸運動を指しています。肺は自然界の清気を吸い込んで充満し、体内の濁気を吐き出すと空虚になり、呼吸を司る運動器官であり気体交換の場でもあります。「一身の気を主る」というのは、全身の気を維持し調節する機能を指しています。肺が吸入した清気は、脾胃が吸収した水穀の精微および腎精から生じた腎気と合して「宗気」となり、これが肺から全身に散布され、各臓腑器官の正常な生理活動が保たれます。

②宣発・粛降を主る‥‥‥「宣発」とは外向き・上向きに発散・散布することです。脾が転送した水穀の精微を肺が全身に散布し、皮毛(⑤参照)にも達して衛気(えき=体表を保護し外邪の侵入を防御する気)を行き渡らせることによって汗を体外に排出します。「粛降」とは清潔にする・下降するという意味です。肺は気道を清浄に保って清気を吸入し腎に下納(下ろして納める)させ、また散布されて代謝された津液である廃水を膀胱へ下行させます。

③水道を通調する‥‥‥「水道」とは水液代謝の経路、「通調」とは疏通・調節するという意味で、これは②の宣発・粛降作用による機能です。肺は宣発作用によって津液や水穀の精微を全身に散布するとともに、汗孔(汗の出口)の開閉を通じて汗の排泄を調節します。また肺は粛降作用により、代謝された水液を膀胱に送り、尿を生成して体外に排出します。このことから、「肺は水の上源たり」「肺は行水(こうすい)を主る」ともいわれます。

④百脈を朝(ちょう)し、治節(ちせつ)を主る‥‥‥「朝」は集めて送り出すという意味で、「百脈を朝す」とは全身の経脈がすべて肺に集まり、肺での吐故納新(古きを吐き新しきを納める、つまりガス交換による新陳代謝)を経て、宗気の栄養を得た血液が再び全身に循環することを示しています。「治節」とは管理・調節するという意味で、「治節を主る」とは肺の主な生理機能を包括的に説明したものです。肺が呼吸運動を調節することで呼吸が規則的に行われ、同時に全身の気機(昇降出入)が正常に行われて血液の循環も維持され、津液の代謝も管理・調節されます。このように全身の気・血・津液の生成や排泄は、すべて肺の治節作用と密接に関連しているのです。

⑤皮毛を主る‥‥‥「皮毛」は皮膚・汗腺・うぶ毛などの組織を含む全身の表(身体の最外層)のことで、汗を分泌し、皮膚を潤し、外邪の侵襲を防御する機能をもちます。皮毛は肺が輸送した水穀の精微から栄養を供給されています。また肺は呼吸を司り、皮膚の汗孔の開閉によって皮膚呼吸も調節するので、汗孔は「気門」とも呼ばれます。したがって肺気が不足すると、皮毛が乾燥してつやがなくなり、外邪を防御する機能(衛気)も低下してかぜを引きやすくなります。衛気が不足して汗孔の開閉機能が低下すると、自汗(運動や発熱などがないのに自然に汗が出る)や無汗(出るべき汗が出ない)が起こります。

⑥鼻に開竅する‥‥‥鼻は肺の門戸で、呼吸の通路であるほか、肺気が嗅覚を主りにおいを弁別することを示しています。外邪はしばしば鼻から肺に侵入して、肺気を失調させ、鼻閉・鼻汁・嗅覚減退・嗄声(させい=声がかれる)・呼吸困難などの症状が現れます。

⑦憂と悲を主る‥‥‥肺の生理機能は、憂悲(憂愁と悲傷)に密接な関係があります。この二つの情動はやや異なりますが、人体の生理活動に与える影響はほぼ同じです。過度の憂愁や悲傷は気を消耗させ、肺は気を主るために憂と悲は肺を傷つけやすいのです。また逆に肺気が虚していると、憂愁や悲傷が生じやすくなります。

【参考文献】

 神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

 秋に物悲しくなるのは、乾燥した空気のせいなのでしょうか。。。weep

かわいい動物

今日は近所に新しくできたホームセンターがプレオープンしたので、さっそく昼休みに行ってみましたdash ペットコーナーもあり、子犬や子猫やハムスターやウサギや……もうメロメロですlovely(見るだけですがsweat02

ところで新聞やテレビで報道されていましたが、広島大の実験で、幼い犬猫の写真を見ると集中力が高まるという研究結果が出たそうです。成長した犬猫の写真では効果は小さく、また写真を見てかわいいと感じた人ほど効果が大きかったそうです。

これから施術前には、dogcatの写真を眺めることにしましょうかsign02

頭痛の分類(東洋医学編)

前回は現代医学からみた頭痛の分類をご紹介しましたので、今回は中医学的分類ですpaper

まず、頭痛に限らず「痛み」について、中医学では「不通則痛、通則不痛」という原則があります。書き下すと「通じざれば則ち痛み、通ずれば則ち痛まず」となりますが、これは経絡の気血の運行が障害されるとその部分に痛みが発生し、運行が回復すれば痛みはなくなるという意味です。そのため治療においては気血を順調に巡らせることを目標に、足りないもの(虚)は補い、過剰なもの(実)は取り去るように、手技を工夫し同時に生活指導もします。

頭痛の場合も、痛む部位や性状、増悪(症状がひどくなる)・寛解(症状が落ち着く)因子などから病型を判断し、治療方針を決めていきます。中医学での分類は何種類かありますが、病因別では①外感頭痛と②内傷頭痛とに分かれます。

外感頭痛‥‥‥外邪を感受して起こる頭痛。特徴的な症状は、頭痛が持続して止まない、発病は比較的急激であることです。主な外邪によるものを以下に挙げます。

 a.風寒頭痛‥‥‥風寒の邪気を感受して起こります。症状は、頭痛が項背(うなじから背中)にまで及ぶ、悪寒、悪風(風に当たるのを嫌がる)、関節の痛み、鼻閉(鼻づまり)、サラサラの鼻水が流れる、口の渇きはないなど。

 b.風熱頭痛‥‥‥風熱の邪気が人体を侵すことで起こります。症状は、頭が張って痛む、発熱、悪風、鼻閉、濁った濃い鼻水が流れる、顔面紅潮、目の充血、口が渇いて水を飲みたがる、便秘、尿が濃くなるなど。

 c.風湿頭痛‥‥‥風湿が人体を外襲(外から襲う)することや、風邪(ふうじゃ)が侵襲して湿濁(濁った水液)が身体の上部を覆って起こります。症状は、頭が重く沈むように痛む、頭を布で包んでいるような感覚がある、体が重だるい、胸苦しい、食欲不振、吐き気、排尿困難、下痢など。

内傷頭痛‥‥‥臓腑機能の失調や気血不足、痰湿瘀滞(濁った水液が停滞する)が原因となって起こる頭痛。特徴的な症状は、発病が緩慢で頭痛は起こったり消えたりし、臓腑機能の失調症状が伴います。主なものは以下のとおりです。 ずずとくちょう消えたりだいひょ

 a.肝陽頭痛‥‥‥肝陽(肝の陽気)が上亢(じょうこう=上りたかぶる)して起こります。症状は、めまいを伴う頭痛、頭痛の多くはこめかみや頭頂部に起こる、イライラして怒りっぽい、熟睡できない、顔面紅潮、口が苦い、脇腹が張って痛むなど。(※肝については6月22日付ブログ参照)

 b.腎虚頭痛‥‥‥腎が虚しているために髄海(脳)が不足して起こります。症状は、空虚感を伴う頭痛、めまいがしてクラクラする、耳鳴、腰や膝がだるく力が入らない、男子では遺精(性行為外で不随意に精液を漏らす)、女子では帯下(おりもの)など。(※腎については9月1日付ブログ参照)

 c.血虚頭痛‥‥‥血虚のために上部(頭部)に栄養を供給できなくなって起こります。症状は、頭痛が長く続いて絶えない、めまいがしてクラクラする、顔面が白くむくむ、だるさなど。

 d.痰濁頭痛‥‥‥痰濁(水液代謝障害によって形成される粘っこく濁った物質)が頭部を覆って起こります。症状は、頭痛に伴って頭がボーッとする、頭重感、胸苦しい、胃がもたれる、吐き気、痰を吐くなど。

 e.瘀血頭痛‥‥‥瘀血(おけつ)とは滞った血のことです。頭部の外傷や、長期にわたる頭痛によって、瘀血が停滞して起こります。症状は、頭痛が長期間治らない、刺すような痛み、痛む部位は固定して移動しない、顔面は黒ずんで暗いなど。

【参考文献】

 高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006

 

細かい説明は省かせていただきましたが、実際にはこのほかに頭痛の起こる部位(前頭・側頭・後頭など)によっても区別し、治療方針を立てます。現代医学の場合と同様、人により複数の要因が絡み合っていることもありますので、発症から現在までの経緯をお聞きしながら優先順位を決め、少しでも早く患者さんの苦痛が楽になるよう施術に当たっていますdash

頭痛の分類(現代医学編)

今日は彼岸の中日、秋分の日でしたねmaple 近年はずっと9月23日でしたが、22日になるのは明治29年(1896年)以来116年ぶりだそうですeye

さて前回予告しました「頭痛」について、今回は現代医学での分類をご紹介いたします。頭痛には急性のもの(くも膜下出血や脳出血、髄膜炎など)と慢性のものとがありますが、ここでは鍼灸の臨床で主に見受けられる慢性頭痛を取り上げます。またその中でも、脳腫瘍や頭頸部の外傷・血管障害、感染症、目や鼻の障害等々、頭痛の原因となる疾患がない「一次性頭痛」について解説いたします。(ちなみに原因疾患があれば「二次性頭痛」といいます。)

国際頭痛学会(IHS)による国際頭痛分類第2版(ICHD-Ⅱ、2003年)では、一次性頭痛は①片頭痛、②緊張型頭痛、③群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛、④その他の一次性頭痛に分けられています。代表的な①~③について見てみましょう。

片頭痛‥‥‥文字どおり頭の片側に起こる頭痛で、ズキンズキンとした拍動性(心臓の拍動・脈拍に伴って変化する)の、中等度~重度の強さの痛みが4~72時間持続します。日常的な動作や入浴によって痛みが増し、悪心(胸のむかつき)や嘔吐、光過敏・音過敏を伴います。片頭痛には大きく分けて「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の2タイプがあります。この「前兆」とは、頭痛が始まる直前または同時期に起こるもので、視覚症状(「閃輝暗点」というキラキラ光るジグザグの点や線が見えたり、視界の一部が見えなくなったりする)、感覚症状(チクチク感や感覚が鈍くなる)、言語症状(失語性の言語障害)です。これらはいずれも一過性のもので、持続時間は5分以上60分以内とされています。

緊張型頭痛‥‥‥一次性頭痛の中で最も一般的なタイプの頭痛で、頭の両側に起こります。圧迫感または締め付け感(非拍動性)の、軽度~中等度の強さの痛みが数分~数日間持続します。日常的な動作によって悪化することはなく、入浴したりリラックスすると改善するのが片頭痛との違いです。悪心はありませんが、光過敏または音過敏を伴うことがあります。発作の起こる頻度により、「稀発反復性緊張型頭痛」(1ヵ月に1日未満〈年間12日未満〉の頻度で発現する頭痛が10回以上)、「頻発反復性緊張型頭痛」(3ヵ月以上にわたり、平均して1ヵ月に1日以上15日未満〈年間12日以上180日未満〉の頻度で発現する頭痛が10回以上)、「慢性緊張型頭痛」(3ヵ月以上にわたり、平均して1ヵ月に15日以上〈年間180日以上〉の頻度で発現する頭痛)の3タイプに分かれます。

群発頭痛‥‥‥発作が群発して起こる「群発期」と発作のない「寛解期」がある頭痛で、一側性の重度の頭痛発作が眼窩(頭蓋骨の眼球が入る部分のくぼみ)部、眼窩上部、側頭部のいずれか一つ以上の部位に現れ、15~180分間持続します。発作頻度は2日に1回~1日8回です。発作時には頭痛と同じ側に結膜充血や流涙、まぶたの腫れなどの目の症状、鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状が一つ以上伴います。群発期は数週~数ヵ月間続き、寛解期は数ヵ月~数年間続きますが、患者の約10~15%は寛解がない慢性症状を呈します。(なお三叉神経・自律神経性頭痛については、やや専門的になりすぎますので割愛させていただきます。)

以上、それぞれに症状が少しずつ違い、適する薬も違ってきます。また複数の種類の頭痛が混在する場合もあります。ストレスや睡眠不足あるいは寝すぎ、アルコールなど原因となる物事をできるかぎり避け、薬を服用する場合も専門医の指導に従ってください。自己判断で漫然と頭痛薬を飲み続けると、「薬物乱用頭痛」を引き起こし、ますます治りにくくなってしまいます。もちろん鍼灸も、頭痛の緩和に役立ちますshine