タマネギの効能
天気予報のとおり、今日は冬のような冷たい風が吹いて肌寒さが増してきました 北日本や北陸では初雪が降ったそうで、当院でもストーブを出して冬支度です
これからの季節は鍋物や煮込みなど、温かい料理の出番が多くなりますね その中でも、シチューやスープといった西洋料理に欠かせない食材の一つがタマネギですが、この日常よく使う野菜の中医学的効能を見てみましょう
〔タマネギ(玉葱)〕
性味は平・温、辛(生)・甘(加熱)。
効能は、温中理気(胃腸を温め気の巡りをよくする)、消食(消化を促進する)、利水消腫(利尿作用でむくみを取る)、解毒駆虫(毒素を解消し寄生虫を駆除する)、通陽(陽気を温めて通じさせる)など。
主な適応症は、食欲不振、消化不良、高脂血症、食中毒、腸炎、不眠など。
タマネギには血中のコレステロールや中性脂肪を減らす作用があり、また血圧や血糖値を下げる作用もあるので、メタボリック・シンドロームに適した食材といえるでしょう。カリウムが豊富なため、その利尿作用によりむくみを解消します。タマネギの辛味成分であるアリシンは、体内でビタミンB₁と結合し、疲労回復や新陳代謝の活性化、消化の促進、食欲増進などの作用があり、さらに強い抗菌・殺菌作用も持っています。そのほか、香りが高いため精神安定の作用もあり、不眠症にも効果的です。
とくに体質は選びませんが、体を温める作用があるので、熱っぽい時や普段からのぼせやすい人は控えめにしましょう。
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
木村孟淳・御影雅幸・劉園英(共著):中国医学 医・薬学で漢方を学ぶ人のために,南江堂,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
卵の効能
ようやく台風が去り、秋晴れが戻ってきました といっても、日中はまだ暖かさがあるものの、朝晩の冷え込みは増してきて、お布団のぬくもりが嬉しい季節です
16日付ブログでお月見について取り上げましたが、この時季に恋しくなってくる温かいうどんやそばにも「月見」がありますね そう、卵です
今回は日常よく食べる卵(鶏卵)について、中医学的食養生における意義をご紹介します(テーマ設定が唐突な感もありますが……個人的に気になったもので)
〔鶏卵〕
性味は平、甘。卵白が微寒(涼)、甘。卵黄が温、甘。
効能は、全卵が安五臓(五臓を補い機能を高める)、養心安神(心陰を滋養し精神を安定させる)、養血安胎(血を養い流産を防ぐ)、止痢(下痢を止める)など。卵白が清肺利咽(肺熱を冷まし咽の調子をよくする)、清熱解毒(裏熱を冷まし邪毒を取り除く)など。卵黄が滋陰養血(陰液を滋養し血を養う)、潤燥熄風(津液の損耗を滋潤し内風をしずめる)など。
主な適応症は、熱病、空咳、声枯れ、咽痛、目の充血、不眠、貧血、胎動の不安定、産後の口の渇き、下痢、自律神経失調症など。
鶏卵は栄養価が極めて高く、必須アミノ酸(※)がバランス良く含まれています。また鉄分やビタミンA・B₁・B₂なども豊富です。
生卵は消化が悪いので、胃腸の弱い人は加熱して食べましょう。卵白は固くなるまで火を通し、卵黄は半熟が消化吸収によいとされています。1日に1~2個が適量であり、それ以上食べると胃もたれを起こすのでほどほどに。
(※)イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種類。
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
木村孟淳・御影雅幸・劉園英(共著):中国医学 医・薬学で漢方を学ぶ人のために,南江堂,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
エンドウの効能
一昨日の夜、久々に豆ごはんを炊きました といっても、白米に混ぜるだけの「豆ごはんの素」を使ったのですが やはり自分で味付けするよりも塩分がやや多めでしたが、何日間か暑さがぶり返して汗をよくかいたので、ちょうどよかったかもしれません
そんなわけで(どんなわけで?)、今回は豆ごはんに入っているエンドウの効能を調べてみました
〔エンドウ(豌豆)〕
性味は平、甘。
効能は、益中気(脾胃の気を補充する)、利小便(利尿作用)、止泄痢(下痢を止める)、生津(唾液などの分泌を促進する)、消脹通乳(乳房の腫れや痛みを解消し乳汁の出をよくする)など。
主な適応症は、高血圧、糖尿病、消化性潰瘍、こむら返り、母乳の出が悪い、しゃっくり、嘔吐など。
エンドウは豆類のため消化しにくいので、胃腸の機能を高める作用はあるものの、一度に大量に食べると逆効果になります。糖尿病や高血圧の人などは、毎日少しずつ食べるとよいでしょう。エンドウの新芽である「豆苗」でも同様の効果が得られます。
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
西瓜の効能
もう8月も下旬というのに、今頃やっと今夏初めてのスイカを食べました おすそ分けで数切れもらっただけですが、一人暮らしだとなかなか大きな果物は買わないので、少量でもとても嬉しいです
ところが、私は20歳ごろから果物のアレルギーを発症しており、子どもの時分には食べられたのに今はまったくダメ、というものが何種類かあります どうやらスイカもその範疇に入るようで、食べている最中は美味しかったものの、食べ終わってから唇やのどがピリピリしてきました(泣)
それはさておき、日本の夏の定番ともいえるスイカ(西瓜)について、中医学的な分析をしてみましょう
〔西瓜〕
性味は寒性、甘味。
効能は、清熱解暑(暑気でこもった熱を収める)、除煩止渇(イライラと咽の渇きを改善)、利小便(強い利尿作用)など。
主な適応症は、暑気あたり、小便が出にくい、口渇、咽喉痛、口内炎、高血圧など。
今月6日付のブログでご紹介した茄子と同様、胃腸を冷やす性質のため、冷え症や胃腸虚弱の人、あるいは一日中冷房の効いた所にいて体が冷えきっている時などには向きません。基本的に体が熱っぽい時に食べるもの、と考えると間違いがないでしょう
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
茄子の効能
明日は早くも立秋、連日の猛烈な暑さも明日からは「残暑」です 今日は立秋の前日なので節分に当たりますが、これは去年も書きましたので詳しくはそちらをご覧ください
久々の食養生シリーズ、今回は夏にピッタリの野菜である茄子を取り上げます(←単に先日食べたからというだけの理由ですが…)
〔茄子〕
性味は寒・涼性、甘味。
効能は、清熱解毒(体にこもった熱を冷まし邪毒を取り除く)、活血消腫(血流の停滞をなくし熱っぽい腫れを解消する)など。
主な適応症は、発熱、食欲不振(とくに夏季)、痔、口内炎など。
夏バテ解消に適していますが、冷やす性質が強いので、冷え症の人や胃腸がもともと弱い人は控えめにしましょう。食べる時に、温熱性のショウガやコショウ、トウガラシなどを加えて調理すると、茄子の寒涼性が緩和されます。また夏以外は、あまり多量に食べないほうがよいです。
「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」といいますが、妊婦さんの場合、子宮を冷やして胎児の発育に差し障ることもありますので、なるべく避けたほうがよいでしょう。
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
今日は半夏生
今日は雑節の一つ「半夏生(はんげしょう)」でしたね これは七十二候(二十四節気をさらに三等分した期間のこと)の一つ「半夏生(はんげしょうず)」に由来しており、半夏という毒草が生える多湿で気候不順なころとされています
この「半夏」というのは漢方(中薬)の生薬でもありますので、中医学的な解説を簡単にいたしましょう
〔半夏〕
サトイモ科カラスビシャク(烏柄杓)の塊根の外皮を除去して乾燥したもの。
性味は温性、辛味、有毒(生で口にした場合)。
中薬学の分類では、温化寒痰(寒邪の絡んだ痰を温めて解消する)薬。
【参考文献】木村孟淳・御影雅幸・劉園英(共著):中国医学 医・薬学で漢方を学ぶ人のために,南江堂,2005
また、ハンゲショウというドクダミ科の植物の名前の由来は、この半夏生のころに花を咲かせるからとも、葉の一部を残して白く変化する様子から「半化粧」となったともいわれているそうです(Wikipedia参照)
疲れ目
今日は暑かったですね 当院の患者さん用のスリッパも、この暑さを機に夏用のものに替えました
さて今日はパソコンの作業が多く、画面をじっと見続けていたら目がショボショボして、涙もうっすら滲んできました
中医学では、このような症状は「肝」と関係します。昨年6月22日付ブログで解説したとおり、「肝は目に開竅(かいきょう)する」といい、五臓の中で目に最も深い関連を持つのが肝です。また「涙(るい)は肝液である」ともいい、肝が涙の分泌量を調整していると考えられます。
目の使いすぎにより肝血を損傷すると「肝労」という状態を惹き起こし、物がはっきり見えない、(肝経の通り道である)両胸脇部の鈍痛、筋肉が弛緩して力が入らないなど、目だけでなく全身に症状が現れます。
ほかにも「久視は血を傷(やぶ)る」という言葉があり、目を使いすぎると血を損傷します。いま挙げた肝血が主に影響を受けますが、心血が損なわれると、心神が不安定になり睡眠に支障をきたします。血は全身に栄養を与えていますので、血の不足が進むと四肢の動きも鈍くなってくるのです。
解決策としては、もちろん休養が一番なのは言うまでもありません 鍼灸治療では、目の周囲と肝経を中心に施術します さらに血を補充するためには、バランスのとれた食事も大切です 目にいいものといえばブルーベリーが有名ですが、薬膳ではクコの実が「養肝明目」の食材として多用されていますね
【参考文献】
神戸中医学研究会(編著):基礎中医学,燎原,1995
高金亮(監修),劉桂平・孟静岩(主編):中医基本用語辞典,東洋学術出版社,2006
オレンジの効能
昨日、頂き物のオレンジを食べました 自分では果物をほとんど買わないので、久々に爽やかな味を堪能しました 柑橘類はいずれも香りが大変よいですが、中医学的にはどんな効能があるのでしょうか
〔オレンジ(ネーブルオレンジ)〕
性味は涼・寒性、甘・酸味。
効能は、清熱生津(体にこもった余分な熱を収め唾液の分泌を促進する)、疏肝理気(肝気の停滞を改善し巡りをよくする)、降気止嘔(気を降下して嘔吐を止める)など。
主な適応症は、熱病による軽度の脱水症状、咽頭炎・喉頭炎、気管支炎、おなかが脹って痛む、乳房の脹痛(女性)、二日酔いの解消など。
栄養学的にはブドウ糖・果糖・ショ糖およびビタミンC、へスペリジン(ビタミンP)が特に多く含まれます。ビタミンCとへスペリジンは、いずれも新陳代謝を促進し、粘膜や毛細血管を丈夫にして抵抗力を高める働きがあります。これにより、美肌効果や抗がん作用なども期待でき、また芳香によるストレス軽減作用もあります。
なお性質が涼・寒性のため、冷え症の方は控えめにしましょう。同じ柑橘類でもミカンは微温性で、グレープフルーツは寒性ですので、体調や気候に合わせて選ぶとよいですね
【参考文献】
梁晨千鶴(著):東方栄養新書,メディカルユーコン,2005
夏翔・施杞(主編),丁鈺熊・銭永益・趙陽(副主編):中国食養大全,上海科学技術出版社,2006
耳のツボ
ここ2、3日また肌寒くなりましたね 昨夜は雨に加えて風も冷たく、外を歩いていたら耳が痛くなりました
中医学では「腎は耳に開竅(かいきょう)する」(2012年9月1日付ブログ参照)といい、腎の状態が耳に現れるという考え方がありますが、それとは別に「耳鍼法(じしんほう)」というものもあります
これはフランスの医師P・M・ノジエが1950年代初頭に提唱し、その後中国でもよく研究された治療法で、耳殻上に胎児が逆さになった形を当てはめ、それぞれの器官や部位に対応する箇所に施術するものです。たとえば耳たぶの上部に顎のツボがあり、顎関節症の人に使ったり、耳介の外側の溝の下方に肩のツボがあり、五十肩の人に使ったりします。
当院では、通常の身体の鍼で十分な効果が得られない方に、この耳鍼法を使うことがあります。その場合、普通の鍼ではなく、「マグレイン」という小さな金属の粒をテープで貼り付けて、ツボへの継続刺激の手段としています。
世間で「耳ツボダイエット」なるものを見聞きすることがありますが、実際の効果には疑問があり、当院では行っておりません。しかしながら、食欲亢進に効くツボもありますので、希望される方にはケース・バイ・ケースで対応しております